21世紀は宇宙開発時代となることが予想されている。しかし、宇宙における建造物は微小な隕石やデブリ(人工衛星等の小破片)の衝突の危険に曝されており、衝突によって生ずる建造物の損傷に対して迅速な補修溶接・接合技術の開発が急務である。しかし、宇宙溶接については旧ソ連(ロシア)で研究が行われたとされているが、その詳細は明らかにされていない。また、アメリカにおいては近々、研究が始められるとされているが、これまでは全く行われていない。
宇宙空間は微小重力(無重力)、超高真空である点で地上とは大きく異なっており、溶融溶接においては、対流現象、気泡の挙動等は重力の影響を受ける地上での溶接実験では予測不可能である。また、超高真空であることから、固相接合による高信頼性接合部が得られる可能性も考えられる。
本研究においては以下の二点に焦点を絞り、研究を行う。
まず、微小重力環境下においてTIG(ガス・タングステン・アーク)および電子ビームを用いた溶融溶接を行い、溶融池の形状、アーク挙動、対流現象、溶融池内の気泡挙動等におよぼす重力の影響を明らかにし、最適な溶接手法および溶接条件を把握し、宇宙空間における溶接技術を確立する。さらに固相接合については重力の影響が無いため、地上において摩擦攪拌接合(FSW)を行い、接合部の信頼性におよぼす種々の接合因子について、その影響を解析する。
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