研究提案課題(平成16年度研究計画)
 研究提案者
 (氏名、所属、職)
安田 弘行
超高圧電子顕微鏡センター・助教授
 研究提案課題   変位型相変態を必要としない鉄系超弾性合金の開発
 研究目的  

「超弾性」とは、通常の材料では塑性変形してしまう大きな変形を加えても除荷すれば元の形状に戻る現象のことであり、携帯電話のアンテナや眼鏡のフレーム等に応用されている。しかしながら、コストの問題からその応用は小規模部材に限定されてきた。我々の研究グループでは、変位型相変態を生じないFe3Al単結晶で回復可能歪が5%にも及ぶ超弾性の発現を確認した。この現象は、応力負荷時に超部分転位が逆位相境界(APB)をドラッグしながら運動し、除荷時にAPBの表面張力によって転位が逆運動することで生じる。我々はこの現象を「APB擬弾性」と呼び、新しいタイプの超弾性として注目している。変位型相変態を必要としなければ、実用化されているTi-Ni系合金に比べ動作温度範囲ならびに組成範囲の拡大が期待できる。また、安価な鉄系合金で超弾性が得られれば、損傷を自ら回復する「自己修復鋼板」の創製も夢ではない。その実用化に向けては、発現機構の解明ならびに更なる特性改善が必要である。本年度も昨年度に引き続き、この超弾性合金の開発を目的とし、以下の事項について調査・検討を行なう

1)

Fe-Al二元系合金において超弾性が発現する温度範囲ならびに組成範囲を調査する。

2) Fe-Al-X三元系超弾性合金における最適合金組成を調査する。
3) 他の合金系で超弾性発現の有無を調査する。
 研究概要  
1)

Fe-Al超弾性合金における動作温度範囲ならびに組成範囲の決定
Fe-Al合金の超弾性は変位型相変態に因らないため、動作温度範囲ならびに組成範囲の拡大が期待される。本研究では、-196~600°Cの温度範囲で超弾性挙動を調査すると共に、超弾性の発現する組成範囲を確定する。

2)

Fe-Al-X三元系超弾性合金における最適合金組成の探索
置換サイト、原子半径等に注目して添加する第三元素を選択し、Fe-Al合金における超弾性特性の改善を図る。さらに、その超弾性挙動に及ぼす第三元素添加の影響を系統的に解明する。

3)

超弾性を発現する新規合金系の探索
Fe系合金にて変位型相変態に因らず超弾性を発現させるためには、D03型規則構造の形成が不可欠である。本研究では、D03構造を形成する他のFe系合金について超弾性発現の有無を確認する。さらに、Fe系以外の合金系の探索も行なう予定である。

【Close】
mailお問い合わせ coe21@mateng.osaka-u.ac.jp
ページの先頭へ移動 ページの先頭へ移動

研究提案課題(平成15年度研究計画)
 研究提案者
 (氏名、所属、職)
安田 弘行
超高圧電子顕微鏡センター・講師
 研究提案課題   変位型相変態に因らない鉄基超弾性合金の開発
 研究目的  

超弾性合金が携帯電話のアンテナやメガネのフレームといった小型部品にしか応用されない理由の一つは、構成元素や製造法にかかるコストが高いという点にある。鉄系の超弾性合金が開発されればコストを大幅に削減することができ、その結果、大型部品への適用も可能になる。しかしながら近年まで、鉄合金に超弾性を付与するためには、白金やパラジウムといった高価な元素を添加するしか方法がなかった。我々の研究グループでは、鉄に少量のアルミニウムを添加した合金にて、巨大な超弾性を発現させることに成功した。このFe-Al合金では、変位型相変態を基調とする従来の超弾性とは異なり、FeとAlにより形成されるD03型規則格子中(図参照)で、Al原子同士に働く強い斥力により超弾性が発現する。したがって、Al原子と優先的に置換し、その斥力を増加させるSi、Ga、Geといった第3元素の添加は、Fe-Al超弾性合金の更なる特性改善に繋がる可能性がある。さらに、Fe-Al合金と同様にDO3型規則格子を形成するFe-Si系、Fe-Ga系、Fe-Ge系合金でも超弾性の発現が期待される。そこで本年度は、以下の事項について調査・検討を行う。(1) 第3元素添加によるFe-Al超弾性合金の特性改善、(2) 超弾性を発現する新規合金系の探索

 研究概要   1. 鉄基合金単結晶の作製
1) Fe-Al-X(X=Si、Ga、Ge)3元系合金ならびにFe-Si、Fe-Ga、Fe-Ge2元系合金をアーク溶解(大亜真空 ACM-01S)にて溶製
2) 光学式浮遊帯域溶融法(NEC SC-35HD炉)による単結晶の作製
3) 高温用熱処理炉(Keramax BS-4B08)によるアルゴン雰囲気中1100℃での均質化焼鈍
4) 放電加工機(BROTHER CONT-800)による圧縮試験片の作製
2.圧縮試験(SHIMADZU EHF-ED5-10L)による超弾性特性の評価

3.透過型電子顕微鏡(JEOL 3010)による規則ドメイン構造ならびに転位組織の観察
【Close】
mailお問い合わせ coe21@mateng.osaka-u.ac.jp
ページの先頭へ移動 ページの先頭へ移動

研究提案課題(平成14年度研究計画)
 研究提案者
 (氏名、所属、職)
  安田 弘行
超高圧電子顕微鏡センター・講師
 研究提案課題   自己修復ならびに自己診断機能を
併せ持つFe-Al超弾性合金の開発
 研究概要  

材料の様々な物性は、材料内部の微細組織や格子欠陥に極めて敏感である。本研究では、電子顕微鏡ならびに磁気的手法による微細組織ならびに格子欠陥の解析を通じて、材料の物性を向上するとともに、その信頼性を評価することを目的としている。本年度は、Fe-Al超弾性合金について、以下の項目に注目して研究を行う。

(1)規則構造制御によるFe-Al超弾性合金の高性能化
「超弾性」とは、大きな歪を与えた材料の形状が応力除荷時にほぼ100%回復する現象である。Fe-Al合金では、従来の超弾性合金とは異なり、変位型相変態を生じないにも関わらず巨大な超弾性が発現する。本研究では、Fe-Al合金特有の規則構造を電子顕微鏡により解析し、その超弾性との因果関係を解明する。さらに得られた知見をもとに、Fe-Al合金の規則構造を制御することで、その高性能化を図る。

(2)磁気を用いたFe-Al超弾性合金の機能劣化診断法の確立
Fe-Al超弾性合金を繰り返し使用すると、結晶内部に格子欠陥が残留し、形状回復能が低下する。本研究では、Fe-Al合金が強磁性体であることを利用して、磁気的手法により格子欠陥を非破壊で検出し、その機能劣化を診断する手法を確立する。

以上により、インテリジェント材料の3機能のうち、「自己修復機能」ならびに「自己診断機能」の2要素を併せ持つFe-Al超弾性合金の開発を行う。

【Close】
mailお問い合わせ coe21@mateng.osaka-u.ac.jp
ページの先頭へ移動 ページの先頭へ移動