「超弾性」とは、通常の材料では塑性変形してしまう大きな変形を加えても除荷すれば元の形状に戻る現象のことであり、携帯電話のアンテナや眼鏡のフレーム等に応用されている。しかしながら、コストの問題からその応用は小規模部材に限定されてきた。我々の研究グループでは、変位型相変態を生じないFe3Al単結晶で回復可能歪が5%にも及ぶ超弾性の発現を確認した。この現象は、応力負荷時に超部分転位が逆位相境界(APB)をドラッグしながら運動し、除荷時にAPBの表面張力によって転位が逆運動することで生じる。我々はこの現象を「APB擬弾性」と呼び、新しいタイプの超弾性として注目している。変位型相変態を必要としなければ、実用化されているTi-Ni系合金に比べ動作温度範囲ならびに組成範囲の拡大が期待できる。また、安価な鉄系合金で超弾性が得られれば、損傷を自ら回復する「自己修復鋼板」の創製も夢ではない。その実用化に向けては、発現機構の解明ならびに更なる特性改善が必要である。本年度も昨年度に引き続き、この超弾性合金の開発を目的とし、以下の事項について調査・検討を行なう
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Fe-Al二元系合金において超弾性が発現する温度範囲ならびに組成範囲を調査する。 |
2) |
Fe-Al-X三元系超弾性合金における最適合金組成を調査する。 |
3) |
他の合金系で超弾性発現の有無を調査する。 |
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