(B) ナノ結晶紫外蛍光体・発光素子の研究
上記のように大きさを変えることで発光する波長を変えられるという性質は、目に見える可視光に限ったことではありません。
酸化亜鉛(ZnO)をナノ結晶にすると、紫外光で同じ効果を得られます。紫外線は、蛍光灯の励起光、殺菌衛生灯、
各種の配線パターンを形成するリソグラフィ用の光源、光触媒用の光源、ディスプレー用のブラックライトなど様々なところで応用されていますが、
現在はその光源として主に水銀灯が使われています。水銀は毒性の高い元素ですから、それを使わない光源が必要となっています。
我々のグループは、サイズによって発光波長を変えられる良質なZnOナノ結晶を世界に先駆けて開発しました。
現在はより高性能なZnOナノ結晶の合成法の開発と紫外EL素子の作製を研究しています。
(C) 半導体ナノ結晶を用いた超高効率太陽電池の研究
太陽電池は光が照射された半導体中に生成する電子を取り出すことで発電しています。
通常のバルク結晶(大きな結晶)では、一つの光子(光の粒子)から一つの電子しか生成しません。
ところが、ナノ結晶では一つの光子から二つ、三つ・・・と複数の電子が生成する、マルチエキシトン生成とよばれる現象が観察されます。
一つの光子から複数の電子が生成するということは、取り出せる電流が2倍、3倍・・・になる、ということなので、
太陽電池の変換効率の飛躍的な向上につながる現象として、大きな期待がよせられています。
このような電池(量子ドット太陽電池)は、現在主にMBEなどの高価な設備を使った気相の薄膜成長法を使って作られたナノ結晶の薄膜で研究されています。
我々のグループでは、ビーカーとフラスコを用いてナノ結晶が大量に作ることができるコロイダル量子ドットの薄膜化で研究を進めています。
きわめて質の高い半導体ナノ結晶のコロイド溶液を作る技術がその基礎を支えています。
(A) 空気中でも極めて安定なワイドバンドギャップ酸化物半導体の研究
直接遷移型半導体は各種の発光素子に使うことができる魅力的な材料です。
半導体を使った光素子は、赤外線、可視光線、近紫外線と歴史とともに短波長化してきました。
今後もその要求は進み、より波長の短い紫外線の領域へと拡大されていくことは間違いありません。
そのような要求に応える材料として窒化ガリウムアルミニウム[(AlGa)N]が盛んに研究されています。
我々のグループでは空気中で非常に安定な酸化物半導体で、その要求に応える新材料を創り出すことにチャレンジしています。
これまでに、LiGaZn2O4というバンドギャップが約4eVの新物質を見出しており、
現在はその性質の詳細の解明と、良質結晶の作製方法を研究しています。
(B) 誰もが絶縁体と思っている物質に導電性を与える
イオン結合からなる無機化合物の代表は、酸化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物などです。
これらのうち、ハロゲン化物を除く無機イオン性化合物では、半導体や金属的導電体、超伝導体などが既に知られています。
ハロゲン化物は、言ってみれば“食塩”のようなものですから、このなかを電子が動き導電性が発現するなどとは、
普通では考えられません。それを実現し、導電性無機化合物の歴史に新しい一コマを描き加えたいと思っています。
(C) 固体電解質(イオン導電体)の導電性はどこまで大きくできる?
固体のイオン導電体(固体電解質)は、固体酸化物形燃料電池やリチウムイオン電池などの二次電池の中核材料です。
固体電解質のイオン導電性が大きくなるとそれらの性能も飛躍的に向上します。ところでその導電性の限界はどれくらいなのでしょうか?
その答えを知る人は誰もいません。「世界最高」の導電性に挑戦するのは今がチャンスです。一体どこまで大きくできるでしょうか・・・