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CREST「カスタム力学機能制御学の構築 ~階層化異方性骨組織に学ぶ~」
(研究領域名:革新的力学機能材料の創出に向けたナノスケール動的挙動と力学特性機構の解明)

自然界の創製物の多くは、原子・分子といったナノ~マクロレベルに至るまで階層化異方性構造を示し、最適な力学機能を発揮します。生体骨はその代表例であり、適材適所で力学機能を発現するための階層化異方性組織を有しています。本プロジェクトは、骨の階層化異方性組織に学びながら、人為的に力学機能を制御するための学理を構築し、最終的には力学機能をカスタム制御した革新的機能材料の創製・検証を行うことを目的としています。

研究背景

2021年、研究代表者の中野らは、金属3Dプリンティング(3DP)における局所溶融/凝固が、立方晶系合金にて引張方位に依存した顕著な強度異方性を発現させ、10%を超える破断伸びを維持しつつ最大応力1,300 MPaに迫る高強度化を実現することを見出しました。[Acta Mat. 2021]

一方、2017年、2019年には、β型Ti基BCC合金ならびにNi基FCC合金において、レーザビームによる溶融scan strategy(熱源走査戦略)制御が、ミリメートルオーダーのマクロレベルでの結晶方位、さらには弾性率を任意に制御できる可能性を世界に先駆けて見出しています。[Scripta Mat. 2017, Mater & Design 2019]

加えて、2021年には、BCC型ハイエントロピー合金において、レーザビーム特有の急冷凝固が、優れた力学特性の発現に必須となる固溶体の形成に有効であることを明らかにしています。[Scripta Mat. 2020]

これらの研究成果から、我々の研究グループは、金属3DPにより独自にナノ~メソ~マクロにわたる3DP特異界面(「ナノ~メソ自己組織化界面」と「メソ~マクロ人工界面」に分類して定義)から成る多階層界面構造を導入することが可能であり、3DP特異界面が力学機能を支配する因子であると考えています。

本プロジェクトでは、骨の階層化異方性組織の力学機能発現に学びつつ、「3DP」「ナノ構造解析」「シミュレーション」をコア技術として、ナノ~メソ~マクロをつなぐ3DP特異界面における変形媒体のダイナミックな挙動とその作用機序を解明し、最終的には3DP特異界面デザインに基づき、力学機能を人為的にカスタム制御した革新的機能材料の創製・検証を行うことを目的として研究を進めます。

自然界の創成物である「骨組織」に学ぶ:骨組織の階層化異方性組織

研究方針

上記の研究目的を達成するために、サイバー・フィジカル空間の融合技術により、以下の3つの目標を実現します。

目標1 3DP特異界面でのナノ構造評価・力学機構の解明

局所溶融/凝固により導入された3DP特異界面の構造をナノ~メソ~マクロレベルで明らかにし、各階層を跨ぐスケールでの階層化変形モデルを構築し、カスタム力学機能化の設計要素となる力学作用機構を解明します。

目標2 異方性カスタム力学機能化のための3DP特異界面設計

目標1の結果に基づき、材料のマクロな異方性力学機能をカスタム化するための3DP特異界面設計法の構築、および金属3DPによる特異界面生成プロセスを確立します。

目標3 カスタムデザインによる革新的力学機能材料の創出

目標2で構築する3DP特異界面設計手法を実践し、力学機能のカスタムデザインによる革新的力学機能材料を創出します。

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