![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() |
材料中に無数にある結晶粒界は酸素イオン伝導の阻害要因として知られている。また単結晶中での添加不純物は酸素イオン伝導に不可欠な酸素空孔形成をもたらすものの、酸素イオンを捕捉することでしばしば阻害要因となる。ところが、この2つの阻害要因が合わされば酸素イオン伝導に対して促進要因と成りうることがこれまでの研究で分かってきた。
多結晶材料中では、望もうが望むまいが、結晶粒界には必ず添加不純物が偏析する。この添加不純物の結晶粒界での偏析メカニズムを計算機実験を駆使して解明し、その結晶粒界不純物偏析が酸素イオン伝導にもたらす影響を定量的に理解することで、高価な単結晶ではなく、通常の材料プロセスにて作成される多結晶材料の酸素イオン伝導の向上を図り、単結晶では獲得出来ない特性を材料に付与することを目指している。
材料計算科学的手法による予測から有望な添加物群の候補が得られた暁には、実際に実験的手法にてその効果を検証すると共に、計算では予測し得なかった因子を明確にすることで、更なるイオン伝導特性向上を目指す。
![]() Fig. 1-1 An atomic configuration in the vicinity of a grain boundary. | ![]() Fig. 1-2 Trajectory of O2- ion in the vicinity of a grain boundary projected onto a 2D plane. |
廃熱を利用した熱から電気へのエネルギー変換を可能にする熱電変換材料の特性は材料の電子的特性と熱的特性により決まる。これまでの研究により幾つかの層状化合物が高い変換効率を達成することが知られている。電子的特性については精力的な研究が為されてきたものの、格子振動による熱的特性、特にその特性支配メカニズムについての理解は乏しいのが現状である。本研究室では計算機実験を駆使して熱伝導メカニズムを解明し、電子的特性を損なうことなく熱伝導度を最適化することで、エネルギー変換効率の向上を目指している。
特に層状酸化物材料は、熱力学的に安定である為に通常の材料プロセスにより合成可能であるが、見方を変えれば、ナノメートル未満の間隔で異相界面が安定なバルク中に存在し、界面近傍の原子空孔や不純物などの点欠陥と相互作用している状態と見ることも出来る。それゆえ、前項目の結晶粒界偏析の場合と同様の格子欠陥制御を適用することが可能で、未だ知られていない熱力学的に安定な状態にて目的の材料特性群(熱電変換材料の場合は電子的特性群と熱的特性)を最適化できる可能性を大いに秘め、既存の理論に囚われない計算材料科学的手法により計算機実験並びに予測を行なうことで、既存の理解の枠組を超えた新規材料特性の獲得を目指している。
計算的手法により新規特性支配メカニズムが発見された暁には、実験を行い予測の有効性の検証を行なうと共に、計算的手法では取り入れていないが重要な因子を特定することを考えている。
![]() Figure 2 Schematic diagram of heat-to-electricity conversion in a layered thermoelectric oxides. |
前項に挙げたように、層状酸化物はその結晶構造中に元来含まれるナノメートル未満の間隔の異相界面の存在により、前述の熱電変換材料としてではなく、リチウムイオン電池、NaS電池など、他の3次元結晶構造を有する化合物が獲得出来なかった非常に興味深い特性を有している。しかしながら、実験的研究では合成法が発見された特定の材料系の周辺に関する知識しか得られて居らず、計算的研究では材料特性の最適化を提案したところでその実現性が未知数という問題がある。実際、似たような組成であるにもかかわらず層状構造を取らずに3次元構造をとったり、通常の材料合成法では得られず電気科学的手法を用いて初めて合成可能となる例などが知られており、層状構造化合物の材料特性はおろか、その層状構造の実現性の起源すら理解が決定的に不足している。
本研究室では、化合物物性の何も仮定しない第一原理計算法という電子レベルの計算材料科学的手法により、系統的に層状酸化物の安定性の支配要因を明らかにしようと試みている。特に、原料化合物からの合成可能プロセスの提案や3次元構造への構造・相変態を防ぐ為の指針の獲得を目指している。更に、材料特性向上の観点のみならず層状構造安定化の観点からの不純物添加も視野に入れている。
計算的手法により新規特性支配メカニズムが発見された暁には、実験を行い予測の有効性の検証を行なうと共に、計算的手法では取り入れていないが重要な因子を特定することを考えている。
![]() ![]() Figure 3 Two kinds of layered cobalt oxides. |
磁気異方性を有するL10合金は、磁場や応力場などの外場を印可することで、FCC高温相からの秩序-無秩序変態を通じて微視的な磁気異方性が同一のバリアントのみが生存して巨視的な磁気異方性が初めて顕在化する。これまでの精力的な実験的試みによりバリアント単一化の方法は知られているものの、外場が組織形成に与える微視的影響、特に、どの段階でどの様にどの因子が効果的に作用することでバリアント単一化が実現しているかについては未解明な点も多い。これが、この材料組織制御法の一般化の阻害要因となっており、数々の未だ知られぬ新規材料の登場を阻んでいると考えられる。
本研究室では、熱力学に基づいた組織形成シミュレーション法を駆使し、実験に於いて観察されている微細組織の再現を試みるのではなく、計算機実験を通じて現象の背後の支配メカニズムの解明に取り組んでいる。その取り組みの結果、実験にて用いている外場がどの時点でどの様に材料組織生成に支配的寄与を為し、どのような材料物性がそれに呼応する形で最終的にバリアント単一化を実現しているかが分かりつつある。更に、解析的理論に頼ることなく、数値シミュレーションを通じて現象の一般化を図り、より広範な材料の潜在的特性の顕在化を可能にする材料プロセスの提案を試みている。
![]() ![]() ![]() ![]() Figure 4 Evolution of multi-variant structure WITHOUT external field. |
炭素鋼は最もよく知られた構造材料と行っても過言ではない。凝固過程により材料組織が根本的に決まり材料強度などの特性は材料組織に支配されるため、凝固過程でのより詳細な相変態現象が研究されている。近年材料プロセス・デバイス研究室による精力的な放射光を用いた凝固その場観察により、これまでは分かりえなかった様々な現象が解明されつつある。しかしながら、現象は正確に把握出来てもその支配メカニズムが未だ不明であることが少なからず、材料組織制御を通じた材料特性制御の為には、そのメカニズム解明が待たれる。
本研究室では材料プロセス・デバイス研究室との相補的な協力関係の元、材料組織レベルでの熱力学に基づいた組織形成に関する計算的手法を駆使して、凝固その場観察で明らかになった現象のメカニズムの理解を試みると共に、その制御指針の確立を試みている。有効な指針が得られた暁には、実際の凝固実験にてその予測の有効性を検証するとともに、更なる理解→方針確立→制御を試みることを考えている。
![]() ![]() ![]() Figure 5 Simulated growth of δ-Fe upon solidification. |
その他、産業界の各分野の企業との共同研究や受託研究を行なっております。