グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」の終了にあたって

拠点リーダー 掛下 知行

拠点リーダー、大阪大学大学院工学研究科長
大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻教授  掛下 知行

本グローバルCOE拠点は平成19年の開始より5年が経過し、この3月をもって終了致します。本グローバルCOE拠点は、材料に関する教育・研究の世界的拠点となることを目指し、前身の21世紀COEプログラム「構造・機能先進材料デザイン研究拠点の形成」より10年にわたって博士課程大学院生への教育の充実、若手研究者の自立促進のための研究環境の整備、さらには組織改変を着実に実行し、大阪大学の材料系専攻と関連研究組織が日本を代表する材料研究教育拠点のひとつとして認知されるまでになったと自負しております。

この5年間にRAとして雇用した博士課程大学院生は延べ78名を数え、それぞれ企業・大学・公的研究機関にて活躍しています。特に、大学等の公的機関にはこれまでに11名が就職し、それぞれ着実に成果を上げています。COEプログラム開始以前では博士課程院生に対する指導は個別の研究以外には皆無に等しい状態でしたが、海外から招聘した多数の著名研究者による基礎的講義、プレゼンテーション、ディスカッションあるいは論文英語の指導などを行い、研究者・技術者として必要なスキルを確実に身につけるための教育プログラムを構築しています。また、これらの教育プログラムを大学院教育の一部として正規の教育課程に組み入れました。若手研究者に対しては学内外の他グループの研究者との交流を奨励し、多数の共同研究を実施できる体制を整えています。また、海外交流ではCOEプログラムを契機に22の機関・組織と交流協定を交わし、学術交流行事、共同研究ならびに人材交流を通じて国際化をはかっています。これらは、学術交流にとどまらず博士課程大学院生や若手研究者の国際コミュニケーション能力の強化に大いに役立っています。一方、学内組織では従前の材料系3専攻をマテリアル生産科学専攻として統合するとともに、このCOEプログラムを通じて構築した、工学研究科内の他専攻・組織の材料関連領域・分野との連携関係を大学組織として制度化するため、工学研究科附属構造・機能先進材料デザイン教育研究センターを設立いたしました。

21世紀COEならびにグローバルCOEは大学院教育整備のためのプログラムとして実施され、終了後はその成果を継続・発展することが求められています。これまでに開発した教育プログラムならびに材料関連の教育研究の体制を、今後は先に述べた構造・機能先進材料デザイン教育研究センターが引き続き実施いたします。COE実施期間中に受け入れた寄附建物「山本記念館?鉄鋼共同研究棟 (フロンティア研究棟2号館) 」があり、COEにより培った事業の継続のための組織と場所を整えております。また、鉄鋼などの材料関連企業との連携による共同研究講座を設置しており、産業との共同研究の体制を整えるとともに教育にも協力していただいております。 本教育研究拠点を、材料の基礎物性から組織制御、材料機能化、製造プロセス、さらには溶接・接合などの構造体化と信頼性評価、生産システムまで、材料分野を幅広くカバーできる人材を集結し、材料学教育・研究の世界的拠点として発展させて社会の期待に応えていく所存ですので、一層のご指導、ご鞭撻、ご協力をお願い申し上げます。

平成24年3月

『国民との科学・技術対話』の推進について(基本的取組方針)」(平成22年6月19日科学技術政策担当大臣及び総合科学技術会議有識者議員決定)に基づき、本G-COE「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」の成果をプロジェクト終了後においても、国民の皆さまに広く認識いただくために、本HPを開設し、継続して本プロジェクトの趣旨を引き継ぐ、「構造・機能先進材料デザイン教育研究センター」とともに、情報発信いたします。