Maintenance Science Summer School 2011

プロジェクト報告

Maintenance Science Summer School 2011
大阪大学・ 工・ マテリアル生産科学専攻 伊與田 宗慶、越智 申久、北野 萌一

1. はじめに
我々は、グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン研究拠点」およびNPO法人日本保全学会の主催のもと、大阪大学において開催された「Maintenance Science Summer School 2011」に参加した。本サマースクールは保全科学に関わる活動の新たな試みの一つとして、我が国を含むアジア諸国における原子力保全に関わる若手育成を目的として開催されたものであり、本年度は、前年度に東北大学にて行われた「Maintenance Science Summer School 2010」に続く2度目の開催である。また、今回のサマースクールは、6日間 (2011年7月24日 (日) 〜 7月29日 (金)) の日程で実施された。参加者は、

・清華大学 (中国) 博士課程学生4名
・南京航空航天大学 (中国) 博士課程学生1名
・西安交通大学 (中国) 博士課程学生1名
・成均館大学 (韓国) 博士課程学生1名
・ソウル国立大学 (韓国) 博士課程学生1名
・北海道大学 (日本) 博士課程学生1名、修士課程学生1名
・東北大学 (日本) 博士課程学生1名、修士課程学生2名
・福井大学 (日本) 博士課程学生1名、修士課程学生1名
・京都大学 (日本) 博士課程学生1名
・大阪大学 (日本) 博士課程学生3名
・神戸大学 (日本) 博士課程学生1名

の計20名となっており、日中韓の大学から、博士後期課程の大学院生を中心とする学生が参加した。また、上記に加えて大阪大学の環境・エネルギー工学専攻の学生3名も聴講生として部分的に参加した。日本からの参加者には留学生も含まれているため、日中韓に加え、マレーシア、ベトナムの、計5カ国からの参加を得ての開催となった。
以降に本サマースクールでの活動内容および参加者の感想を報告する。

2. 研修内容
2.1 Welcome Reception
7月24日には、ホテルマーレ南千里においてWelcome Receptionが行われた。サマースクール初日ということで、最初は、戸惑いが感じられたものの、時間が経つにつれてお互いの自己紹介や自身の国の近況等について会話を行い、親交を深めることができた。


Welcome Receptionの様子

2.2 Lecture
7月27日を除く、サマースクール中のすべての平日の午前中には、保全科学に関するカリキュラムに沿った一連の講義が行われた。講義の内容としては、BWR (沸騰水型原子炉: Boiling Water Reactor) およびPWR (加圧水型原子炉: Pressurized Water Reactor) の構造の解説から始まり、原子力発電所の保全に関する概念の説明、材料劣化診断技術や欠陥探査技術の紹介、是正措置としての補修技術、保全科学の学問体系の説明などが行われた。また、7月28日には、特別講演として、大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻の山口彰教授により、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震を発端とした、福島第一原子力発電所における事故の解説が行われた。これらの講義を通して、参加者は保全分野に関する有意義な知識を得ることができた。


Lecture Sessionの様子

2.3 Historical Visit / Japan Culture
7月25日の午後には、Historical Visit / Japan Cultureとして万博記念公園の散策ツアーに出掛けた。公園内では、EXPO’70パビリオンと呼ばれる、日本万国博覧会当時の出展施設であった鉄鋼館を利用した博覧会の記念館があり、館内の見学も行なった。2010年には上海で「中国2010年上海万博」が開催されたこともあり、特に中国の学生達には興味深かったようである。

2.4 Visit to Tsuruga and Monju NPPs
7月27日は、日本原子力発電株式会社殿および独立行政法人日本原子力研究開発機構殿のご協力を得て、敦賀発電所およびそのPR施設である敦賀原子力館と高速増殖炉もんじゅの見学を行なった。
敦賀原子力館では、現在定期検査中の敦賀発電所1号機、2号機および建設中の敦賀発電所3号機、4号機の構造に関する説明を受けた。また、館内から臨むことができる敦賀発電所1号機、2号機について、各施設の解説を受けた。その後、敦賀発電所3号機、4号機の建設状況を見学した。また、高速増殖炉もんじゅにおいては、研修施設において、高速増殖炉もんじゅの構造に関する解説やモックアップ試験体の見学、ナトリウムの切断体験を行なった。その後、もんじゅ内の2次冷却施設での保全状況について見学を行なった。
すべての内容が個人で行うことが難しく、目新しいものであったため、また、保全の現場を生で体験することは通常の見学ではなかなか許可されないところを見学させてもらったこともあり、参加者は積極的に質問を行いながら理解を深めていた。丸一日の見学であったにも関わらず、もっと時間をかけて見学を行いたかったという意見もあった。


敦賀発電所3号機、4号機の建設状況

2.5 Banquet
7月28日には、大阪大学内レストランであるラ・シェーナにおいてBanquetが開催された。各日の講義の講師の方々にも来ていただき、参加学生のみならず先生方とも有意義なディスカッションを行なった。

2.6 Student Presentation
7月27日を除く、サマースクール中のすべての平日の午後には、自身の国、自身が通う大学、自身の研究テーマについて他の参加者に説明するという内容のStudent Presentationが行われた。工夫を凝らした国や大学紹介では時折笑いが起こる場面が見られた。研究内容については、全員で活発な議論を行なった。また、最終日にはWrap-upと称して、サマースクール初日に決定されたパートナーの研究の要約を行ない、その結果を発表した。ちょうど日本語ネイティブと非ネイティブが10名ずつと言う幸運に恵まれたこともあり、この課題を通して、お互いの研究を深く理解するとともに、サマースクールの一週間を通じて英語で緊密に会話をせざるを得なかったこともあり、他の参加者と比べて、より深い関係を築くことができた。


サマースクール参加者集合写真

3. 研修成果・まとめ
本サマースクールは、我が国を含むアジア諸国における原子力保全に関わる若手育成を目的として開催されたものであり、原子力発電所の構造やその保全に関する講義および原子力発電所の見学が行われた。さらに、一週間と短い期間であったが、日中韓の学生が行動をともにしたため、理工系学生にとって必須である英語でのコミュニケーション能力を培う事もできた。また、サマースクール最終日に実施した、アンケートによれば、参加者の全員が自身の大学で来年度以降のサマースクールの参加を促していきたいと回答しており、非常に満足度の高いものであったことが窺える。本サマースクールで得られた知識、コミュニケーション能力は将来に渡って役立つものであると考えられる。

謝辞
本サマースクールは、大阪大学グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」の支援により実施された。サマースクールの企画・実施等において多大なご尽力を頂いた関係者各位に深く感謝の意を表する。