2011年度理工系大学院生のための海外研究発表研修報告

プロジェクト報告 構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点

2011年度理工系大学院生のための海外研究発表研修報告
大阪大学・ 工・ マテリアル生産科学専攻 若松龍太、原健一郎

1. はじめに
我々は、グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」の支援のもと、アメリカ合衆国・カリフォルニア大学デービス校(University of California Davis,以下UCD)にて「理工系大学院生のための海外研究発表研修」プログラムに参加した。UCDのキャンパスはアメリカ西海岸・カリフォルニア州の州都サクラメントの約25 km西に位置しており、本研修は約4週(2011年8月18日−9月16日)に渡り実施された。本研修の目的は、理工系大学院生にとって必要不可欠となる英語でのプレゼンテーション能力の習得、およびディスカッション能力向上である。さらにはホームステイによる日常英会話能力の向上やアメリカ文化の体験も期待された。研修には本グローバルCOEからは本報告書著者の2名と、大阪大学大学院工学研究科の他拠点のグローバルCOE(高機能化原子制御製造プロセス教育研究拠点)から3名、工学研究科を中心とした一般応募学生32名の計37名が参加した。現地ではUCDのプログラム企画担当者2名およびPhDコースの学生2名に応対していただいた。また研修担当の多くのスタッフおよび学生から暖かい支援をいただいた。ここに本研修プログラムの内容や参加者の感想を報告する。

2. 研修内容
2.1 講義
講義は平日の9時から14時まで行われた。講義は全て英語で行われ、内容はプレゼンテーション手法に関するもの、ホットトピックスについてディスカッションを行うもの、現地の企業および研究施設の訪問を行うものの3点であった。1点目のプレゼンテーションの授業では、自身の研究に関する発表と一般的なトピックスに関する発表を行い、聴衆が理解しやすい発表の組み立て方法や、聞き手に上手く伝える手法、日本語と英語の言語的背景に起因する発表形式の差異などを学習することができた。2点目のホットトピックスに関する講義では、4〜5人の参加者とUCDの学生アドバイザー1人がグループになり、英語でのディスカッションを行った。ここではディスカッションや質疑応答に有用な表現を数多く学ぶことができた。3点目の企業・研究所訪問では、UCD周辺の企業および研究所(Schilling Robotics, LLC., Center for Biophotonics science and technology and Mori Seiki, CO., LTD.)を訪問し、アメリカの開かれた職場の雰囲気を感じることができた。ここでの体験を通じ、海外で活躍することを望むようになった参加者もいた。

2.2 PhDコース学生との個別面談
本グローバルCOEの2名および他拠点のグローバルCOEの3名の参加者には、各人UCDのPhDコースに所属する学生と個人面談する時間が3時間与えられた。面談の内容は自由にリクエストでき、例えば現地のPhDコースの現状について話を聞くことや、国際学会用のパワーポイントやポスターの作成時にアドバイスを受けることなどに時間を使った。

2.3 オーラルプレゼンテーション
本研修の終盤には、国際会議と同様の形式でオーラルプレゼンテーションを行った。発表は研修参加者と、講師、およびグローバルCOE アドバイザーのPhDコース学生に対して行った。研修参加者は、2週間に渡り講義から学んだ内容や、他の参加者の発表等を参考にしながらプレゼンテーションの準備を行ってきたため、最終のオーラルプレゼンテーションは非常に質の高いものとなった。多くの参加者が効果的な表現や、抑揚のつけ方、話すスピードの変化、スライドの作り方、聴衆とのアイコンタクトなど、講義から学んだことの多くを実践し、自身に適した手法を模索することができたようである。また、最終のオーラルプレゼンテーションは質疑応答にも重点を置いており、多くの参加者が積極的に質問をし、非常に活発な質疑応答となった。

3. 現地での体験



UCDでのプレゼンテーションの様子

3.1 ホームステイ
期間中のホームステイを通じて日常英会話やアメリカ一般家庭の生活や習慣を体験することができた。ホストファミリーは総じて我々に対して親切であり、デービスでの生活にストレスを感じた参加者は稀なようである。当初はなかなか英語が聞き取れず苦労したが、日本の家族、授業の様子、日本の文化や制度、一日の出来事や次の日の予定等を話し合うといったスモールトークを日々行うことにより、徐々に会話がスムーズに行えるようになった。中にはデービス周辺の都市の観光などに連れて行ってくれるホストファミリーもいた。また、快く他の参加者を招待させてくれる社交的なホストファミリーもあり、他のホストファミリーとも交流を深めることができ、英語を日常的に使用するよい経験を得られた。デービスが大学を中心とした町であることから、ホストファミリーが他国の留学生を受け入れていることも多々あり、他国の留学生と交流する機会を得た参加者も多かった。

3.2 アクティビティ
研修担当の方々は、非常に多くのアクティビティを準備して参加者をもてなしてくれた。講義後の映画鑑賞や料理体験等には数多くの参加者がおり、アメリカの文化に触れるとともに、研修担当所属の学生だけではなく、他の留学生達とも積極的に交流を深めようとしていた参加者もいた。

3.3 研究室訪問
多くの研修参加者がUCD内の自身の専攻に近い研究室を訪問した。教員が丁寧に対応してくれた場合が多かったようで(教授に直接対応していただいたケースもあったようである)、様々な設備を見学することができた。UCDは設立の経緯の影響から農学部の評価が高い一方、工学部の設備の量や質は、大阪大学の各研究室と比較すると、特筆する点は少ないと感じた参加者が多い。一方で自身の専攻とは異なる分野の研究室を積極的に訪問し、人との繋がりを作った参加者もいた。


UCBの学生との交流会の集合写真

3.4 シリコンバレーでの企業・大学訪問
研修の終盤にシリコンバレー発祥の有名企業三社(Google, Palo Alto Research Center, and Hewlett-Packard)とスタンフォード大学を訪問する機会があった。ここでも開放的な雰囲気を感じることができたとともに、成果主義や、転職に関する考え方の日米の相違など、意義深い話を聞くことができた。

3.5 カリフォルニア大学バークレー校(UCB)での交流
研修最終日に外国語として日本語を選択しているUCB学生と交流する機会があった。自身の将来や人生について討論する場が設けられ、国の違いによる人生設計の違いなどを学ぶことができた。また多くの参加者がUCBの学生とFacebookのアカウントを交換しあうなど、この機会を生かして人との繋がりを広げようと試みた。

4. 研修成果・まとめ
1ヶ月という短期間ではあったが、英語でのオーラルプレゼンテーションをはじめとして、理工系学生にとって必要とされる英語でのコミュニケーション能力を培うことができた。研修を通して英語を使うことに対する苦手意識が払拭され、英語をより積極的に学びたいという意識が芽生えるなど、参加者全員が自身の成長や変化を実感することができ、有意義なプログラムであった。今後の国際会議や研究発表の機会では今回の研修で得た学びを生かして行きたいと思う。

謝辞
本研修プログラムへの参加は,研究拠点形成費補助金グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」(大阪大学)の支援により実現した。また、本研修にあたり、カリフォルニア大学デービス校および大阪大学関係者の皆さまに企画・実施など多大なご尽力・ご指導をいただいた。プログラムおよび関係者各位に深く感謝の意を表する。


Google訪問時の集合写真