学生・若手の活動報告

海外武者修行プログラム・海外語学研修参加報告

アムステルダム大学での在外研究
大阪大学・工・マテリアル生産科学専攻 山岡慶祐

1. はじめに
平成20年7月15日から9月29日までの77日間、アドバンスト海外武者修行プログラムにより、オランダ、アムステルダム大学での在外研究を行った。今回お世話になったのは、Van der Waals-Zeeman研究所のオプトエレクトロニクスグループ(Prof. Tom Gregorkiewicz)で、希土類元素添加半導体の分野で著名なGregorkiewicz先生指導の下、Er添加ZnO薄膜の発光物性評価に取り組んだ。本報告では、滞在中の生活や研究の様子、感想などについてまとめた。

2. アムステルダム大学
アムステルダム大学(Universiteit van Amsterdam)は、オランダの首都アムステルダムにある総合大学で、その起源は1632年に遡る。C. Eijkman(ノーベル医学賞、1929年)、F. Zernike(ノーベル物理学賞、1953年)といった世界的な学者を輩出してきた歴史と、アムステルダムの自由闊達な雰囲気に魅せられた学生が世界中から集まり、現在の学生数は28000人に及ぶ。
Faculty of ScienceのVan der Waals-Zeeman研究所は、アムステルダム大学で教鞭を執ったノーベル賞学者J. D. van der Waals(物理学賞、1910年)とP. Zeeman(物理学賞、1902年)の名を冠した研究所で、Hard Condensed Matter、Soft Matter、Quantum Gases-Quantum Informationの3分野を対象とした研究が行われている。
滞在中、オプトエレクトロニクスグループには、先生の他に技官1人、博士課程学生2人、修士課程学生2人が在籍しており、希土類元素添加半導体や半導体ナノ粒子などの光物性評価を中心に研究が進められていた。

3. オランダ滞在中の生活
アムステルダムは、網目状に張り巡らされた運河の間に煉瓦造りの伝統的な街並みと個性的なモダン建築が見られ、芝生の美しい公園も数多くある、美しい街である。滞在中、大学から自転車で30分程のところにある学生用マンションで暮らしたが、その隣にある公園では野ウサギも見られた。自転車に乗る人が多く、車道と歩道の間に自転車専用路が設けられているところも印象的であった。
オプトエレクトロニクスグループの一日は、朝のミーティングから始まる。先生を囲んでコーヒーを飲みながら、研究の進捗状況、予定などを話し合う。その後、測定の準備を行ってから、昼食。昼時になると台所付の談話スペースや中庭のベンチに研究所の学生、スタッフが集まって来る。大学の食堂には行かず、近くのスーパーで購入してきた食パン、ハム、野菜などを使って、サンドイッチを作りながら食べることが殆どだった。午後は、本格的に実験。私の場合は、主に低温(4.2 K)でのフォトルミネッセンス測定を行った。オランダでは夜遅くまで大学に残る習慣が無いようで、夜の8時頃には測定を終えて帰宅することが多かった。
金曜日の夕方にはグループの研究報告会が行われる。毎週1人か2人が担当することになっており、私も4回発表、ディスカッションをさせてもらった。その他、伝統的なスタイルが特徴的な博士論文の公聴会や、研究所行事の日帰りセーリング旅行にも参加させてもらい、充実した毎日を送ることが出来た。

 

4. 感想
今回のオランダ滞在で、著名な先生の下で有意義な実験を行うことが出来ただけではなく、日本では体験することのできない貴重な経験を積むことが出来た。例えば、研究所内には海外から来たスタッフ、学生が多く、当たり前のように英語が飛び交う環境の中で、英語力の必要性を改めて感じた。また、一緒に実験を行った学生は、実験を行う前に、何を目的に、何を使って、何を測るかということを吟味し、一日の実験を効率良く進めており、見習いたいところも多かった。今回の経験を今後の糧にして、頑張っていきたい。

 

謝辞 在外研究実施に当たり、渡航、滞在費用をご支援頂きました大阪大学グローバルCOEプログラム「構造・機能先進材料デザイン教育研究拠点」に深く感謝申し上げます。


写真:(左から)グループの皆さんとカフェにて、運河に面した大学キャンパス、
アムステルダムの郊外にある風車。